• 2026年5月6日

膀胱がんについて

尿は左右腎臓で作られ左右の腎盂、尿管を通って一時的に膀胱に溜まり(300〜500㏄程度)、尿道から体外へ排出されます。膀胱は下のお腹の骨盤内にある伸び縮みする臓器で、内側は粘膜(→尿路上皮)、外側は筋層でできています。膀胱のほか、腎盂・尿管・尿道の一部の内側は、尿路上皮と呼ばれる粘膜で覆われており、膀胱がんは、この尿路上皮から発生する悪性腫瘍であり、病理学的にはその大多数が尿路上皮がん(90%以上)です。その他には、扁平上皮がんが数%、腺がんが約2%未満を占めるといわれています。

膀胱がんは、泌尿器科領域で前立腺がんに次いで2番目に多いがんです。罹患率は年齢とともに上昇し、男女ともに60歳代以降で増加がみられます。一方、40歳未満の若年層での発症はまれです。また、性別で比較すると男性の罹患率は女性より高く、女性の約4倍に達しています。膀胱がんの危険因子には、喫煙が挙げられます。また、ナフチルアミンやベンジジン、アミノフェニルなどの化学物質を扱う職業に従事していた方でも発症しやすいとされています。特に喫煙は最も重要で、男性の約50%、女性の約30%に関与し、喫煙者は非喫煙者の約4倍の発症リスクを持つとされています。

<症状>

早期の膀胱がんは、痛みのない血尿(無症候性の血尿と呼ばれております)で見つかることが多く、健康診断の尿潜血がきっかけになることがあります。目で見てわかる真っ赤な血尿(肉眼的血尿)が出た場合は、膀胱がんの可能性が高まるため、早めに泌尿器科を受診することが重要です。また、『上皮内がん』というタイプでは、血尿に加えて排尿時の痛み、頻尿、残尿感など膀胱炎に似た症状が出ることがあります。抗菌薬で治らない場合は注意が必要です。

がんが進行すると膀胱の筋肉や周囲組織に広がり、さらにリンパ節や肺、肝臓、骨などへ転移します。進行例では、排尿時の痛みや足のむくみなどの症状が現れることがあります。

<検査>

目で見える血尿で受診した場合でも、まず尿検査で本当に血尿かどうかを確認させていただきます。現在は症状がなくても、顕微鏡では見えない程度の血尿が続いていることがあります。膀胱がんが疑われる場合は、腹部超音波検査(エコー検査)と尿細胞診を行います。エコーは痛みがなくその場で実施できる簡便な検査です。膀胱内の腫瘍の有無を確認できますが、小さな病変や血の塊は区別しにくいことがあります。尿細胞診は負担の少ない検査で、陽性なら膀胱がんの可能性が高い一方、陰性でも完全に否定はできません。確定診断としては膀胱内視鏡検査があります。

・膀胱内視鏡検査
内視鏡で膀胱内を直接観察し、腫瘍の有無を確認します。細く柔らかい軟性膀胱鏡を使用するため、男性でも痛みは少ない検査です。当院でも当日施行可能な検査となっております。膀胱鏡で膀胱がんが確認できれば、膀胱がんの確定診断はつきますが、それ以降の検査として広がりを評価するために造影CTや膀胱MRIを追加で行います。特に、膀胱がんは筋層に浸潤しているか否かが非常に重要で、MRIでは筋層浸潤の評価がCTより精度が高いです。

<治療>

膀胱がんは、筋層(筋肉)の浸潤の有無で治療方針が変わってきますので、筋層にがんがあるかないかが非常に重要になります。

まず、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBt)という内視鏡手術を行います。下半身麻酔(腰椎麻酔)のもとで腫瘍を削り取る手術で、内視鏡で切除した腫瘍組織を顕微鏡検査(病理検査)で詳しく調べて、がんかどうかや悪性の強さ(悪性度)、膀胱壁からどれくらい深く進んでいるか(浸潤度)を診断します。結果により、以下の2つに分類されます。

筋層非浸潤性膀胱がん

がんが粘膜内にとどまるタイプで、内視鏡手術での切除が基本です。ただし再発しやすく、1~2年で60~70%に再発するとされています。再発予防にはBCG膀胱内注入療法(週1回を6~8回)を行うことがあります。これは、弱毒化した結核菌を生理食塩水に溶かし、カテーテルを使って膀胱内に注入する方法です。膀胱粘膜に軽い炎症を起こすことで免疫の働きを高め、がん細胞を排除する効果を期待します。治療後も3か月ごとに膀胱鏡内視鏡下での経過観察が必要です。

※ 典型的な筋層非浸潤膀胱がんは、海藻やイソギンチャクのように、ひらひらとした突起が集まって盛り上がった形をしており、「乳頭型腫瘍」と呼ばれます。一方で、表面があまり盛り上がらず、ビロード状に粘膜が荒れているように見えるタイプもあり、これを『膀胱上皮内がん(CIS)』と呼びます。ただし、この見た目は膀胱炎などの炎症や感染症とも似ており、外見だけでは診断がつかないことが多いです。そのため、膀胱上皮内がんが疑われる場合は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBt)の際に粘膜の一部を採取し、病理検査でがん細胞の有無を確認します。これを膀胱粘膜(ランダム)生検といいます。また、盛り上がった腫瘍を切除した場合でも、見た目が正常な部分に上皮内がんが潜んでいることがあるため、複数箇所から粘膜を採取(ランダムに採取)して調べることがあります。こうした検査の結果、膀胱上皮内がんと診断された場合は、第一選択の治療法としてBCG療法による治療を行います。

・筋層浸潤性膀胱がん
がんが筋層や膀胱外に及ぶタイプで、まず転移の有無を確認します。


◇ 転移(+)の場合は、膀胱全摘除術が行われます。必要に応じて抗がん剤治療を併用します。膀胱全摘除は、近年はロボット支援手術が普及しております。膀胱全摘後は尿をためる場所がなくなるため、尿路再建(変向)が必要です。方法には、腹部にストーマ(回腸導管、尿管皮膚瘻)を作製し集尿袋を使う方法や、腸を使って新しい膀胱(新膀胱)を作製し尿道から排尿する方法があります。膀胱を残したい場合や体力的に手術が難しい場合は膀胱全摘が行えない場合もありますが、根治性は膀胱全摘が一番高いとされています。

☆ いずれにせよ、治療法は「効果」と「リスク」の両方を理解したうえで慎重に選ぶことが重要です。私自身も勤務医時代から、膀胱全摘除術を経験させていただきました。特に、腹腔鏡手術→ロボット支援手術を段階的に施行させていただいた経緯もありましたので、膀胱全摘除に関して不安でご相談がある患者さまなどは、当院にご相談していただければどのような手術などか、体力的に大丈夫かどうかなどを詳細にご説明させいただきますので、よろしくお願いします!


◆ 転移(-)の場合は手術ではなく、抗がん剤や免疫チェックポイント阻害薬などの全身治療が行われます。

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