• 2026年4月9日
  • 2026年4月24日

前立腺がんについて(検査、治療)

前回、前立腺がんの原因・症状についてお話させていただきましたが、今回は前立腺がんの検査・治療についてお話します。

前立腺がんの検査

PSA検査

検査としましては先述しましたように血液検査でのPSA検査が重要となります!

PSA 4.0ng/ml以上が一般的な目安になっていますが、年齢や前立腺の大きさも考慮されるため一回の検査結果だけで判断せず、他の検査所見や症状も確認させていただきます。実際、前立腺肥大症や前立腺炎の患者さまでは普通に4.0ng/ml以上のことも少なくありませんので、すぐに生検(組織採取)ということはせずに前立腺MRIを施行し『本当にがんの疑いがある場所』を特定することで不要な生検を避けたり、より正確な診断につなげたりすることが可能になります。他の検査としては直腸診(肛門に直接指を挿入し前立腺を触診する)、腹部エコーでの前立腺サイズ、がんの有無含め評価も可能です。実際、臨床現場で直腸診なども行いますが限局がん程度であれば診断はつけにくいときもあります。

前立腺生検

PSAとMRI検査を総合的に評価し前立腺生検を行います。前立腺生検とは、会陰部もしくは肛門から前立腺に向けて針を刺して組織を採取する組織検査で、前立腺がんがないか確定診断を行います。『当院での生検を希望する場合日帰りで施行することが可能で、会陰部生検を施行させていただきます。麻酔に関しては局所麻酔か腰椎麻酔を選択できるようにしておりますが、全身状態や内服薬の影響のため局所麻酔下で施行せざるを得ない場合もあります。腰椎麻酔下の場合は、生検後は院内で数時間は待機、安静が必要となっておりますのでご了承ください。尚、生検可否に関しては何より患者さんのお考えやお気持ちが一番重要なためお話を総合的に伺った上でのご判断、ご希望になりますのでその際は、お気軽にご相談ください。』

生検の結果からがんと診断された場合、まず行うのが転移検索です。転移検索で行う方法としては画像検査がメインとなり造影CT、骨シンチグラフィーを行い、前立腺がんの周囲への浸潤度、リンパ節や他臓器への転移の有無を評価します。治療に関してはがんの悪性度や広がりの程度により決定します。現在ではさまざまな前立腺がんの治療が普及しており、患者さまの全身状態、生活背景や仕事の状況、期待余命などを勘案し患者さま個人が治療選択できる時代になっていますのでご安心ください!以下に治療方法を挙げさせていいただきます。

前立腺がんの治療

●監視療法(積極的な経過観察)

前立腺がんの中でおとなしいタイプ(低リスク)のがんが適応となります。
すぐには治療せず、定期的なPSAのチェックと前立腺再生検により前立腺がんの進行がないかを観察しがんの進行が少しでもみられたら、手術療法や放射線治療などの積極的治療を提案させていただきます。

●手術療法

転移のない限局した前立腺がんの患者さまに前立腺全摘除術を行います。臨床上、手術適応となる場合は期待余命が10年以上見込め、併存疾患や既往症が比較的少ない患者さまが対象となりえます。がんがある前立腺を全摘出し残った膀胱と尿道を吻合する手術になります。
手術方法としては、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術があります。私自身、勤務医時代から前立腺全摘除術を開腹→腹腔鏡→ロボット手術で段階的に施行させていただいた経緯もあり100例以上は経験させていただきましたので、手術に関してのご相談があれば心配なこともあるかと思いますので、お気軽にご相談ください。

現在は、ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術(RARP:Robot-Assisted Laparoscopic Radical Prostatectomy)が主流でより安全に手術が可能で体への負担も開腹手術に比べれば格段に軽減されたと思います。しかし、デメリットとしては術後の尿もれが起こりえることがありますが、最近ではロボット手術で尿もれを軽減できるような術式なども普及しており開腹手術時代と比べると明らかに軽減できているように感じております。手術を希望される場合は先ほど述べたように期待余命10年以上という適応などはありますが、すべて取るためがんの根治性が高く、万が一再発しても次の治療選択肢(放射線治療やホルモン療)を残しておけるなどのメリットがあげられます。ですので、手術適応になるような前立腺がんに関しては万が一の追加治療も行えるためがんが原因で致命的になることは多くありません。術後の尿もれに関しては術後数か月以内に収まることがほとんどですが、1年たっても改善しない場合もあるため術前から骨盤底筋体操(尿もれ予防に効果があります)の指導を受けるなども重要となります。頻度は高くないですが、術後の尿もれが重度で遷延している場合などは尿もれ改善のため人工尿道括約筋植え込み術などの手術加療なども行うことも稀にあります。

●放射線療法

限局性~局所進行性前立腺がんの患者さまが適応になります。

・外照射療法 

体の外から放射線をあてる方法です。
現在保険適応のある治療法としては、1.強度変調放射線治療(IMRT)、2.粒子線治療(陽子線治療、重粒子線治療)、3.サイバーナイフ治療などが挙げられます。

1.強度変調放射線治療(IMRT)

標準的な放射線治療で前立腺の形状に合わせ多方向から線量を調整し、隣接する膀胱や直腸へのダメージを最小限に抑えます。外来通院の治療が可能で約6~8週間程度を要します。

2.粒子線治療(陽子線治療、重粒子線治療)

より正確にピンポイントでがんの部位にエネルギーを集中させることで、周囲の正常組織への影響を最小限に減らし高い治療効果を目指す治療です。​粒子線治療専門の施設で行われており、陽子線治療・重粒子線治療ともに3~4週間程度を要します。

3.サイバーナイフ

最先端のロボット技術などが応用された高精度の定位放射線治療装置でロボットアームの先端に取り付けられた放射線治療装置が、体の周りを自由自在に動きながら腫瘍のみにピンポイントで照射します。従来の照射では数週間から数ヵ月要していましたが、サイバーナイフでは1回の線量を高める定位照射を行うため、通院回数を大幅に減らせることが可能です。最短で1週間程度の期間を要します。ご高齢の患者さまや仕事が忙しい方などはお勧めです。

・密封小線源治療

前立腺の中に放射線を放出する線源(カプセル)を埋め込む治療です。
早期の前立腺がんが適応となりますが、数日間の入院が必要となります。

以上が、前立腺がんの一般的放射線療法の説明となります。

余談ですが、放射線治療は一度行うと、同じ場所に再度照射することは難しいという特徴があります。また、治療後にはPSAが一時的に上昇する『バウンス現象』が起きることがありますが、これは再発ではない場合が多いため、泌尿器科専門医による診察のもと経過観察が重要となります。

●ホルモン療法(内分泌療法)

がん細胞の『餌』となる男性ホルモン(アンドロゲン)を抑えることで、がんの増殖を止める治療法です。ホルモン療法は全身に作用するため、転移がある場合や再発予防、手術や放射線治療などの根治療法が行うことができないご高齢の患者さまや合併症が多い患者さまが適応になります。放射線治療の効果を高めるため併用でも使える治療法にもなっております。副作用としては女性の更年期障害に近い症状が出現することがあります。ホットフラッシュ(急にからだが熱くなり汗が出たりする)、性機能の低下、筋力低下や骨粗鬆症、気分が落ち込むなどの精神的変化などが挙げられますが、ホルモン療法自体は非常に効果があり、また副作用が他の治療法と比べて少なく、高齢者や合併症のある患者さまにも安全に行うことができます。

<治療内容>

治療は内服薬と注射薬になります。

◇内服薬

・抗男性ホルモン剤(カソデックス®、ビカルタミド®、オダイン®)

・新規アンドロゲン受容体阻害薬(ARAT剤)(イクスタンジ®、アーリーダ®、ザイティガ®)

◇注射薬

・LHRHアゴニスト(リュープリン®、ゾラデックス®)

・LHRHアンタゴニスト(ゴナックス®)

☆ 上記薬剤を組み合わせることで治療効果を高めます。生活の質(QOL)を保ちながら、がんの進行を 抑えることが期待できます。限局性~局所進行性の前立腺がんでは、放射線治療と併用することで完治も期待できます。一方で、ご高齢の方や合併症が多い場合は、ホルモン療法単独で経過をみることもあります。

上記投薬治療は当院でも可能なため、治療薬に関しての選択・詳細はお気軽にご相談下さい!

しかし、がんの悪性度や進行度によりますが長期間治療を続けると、がん細胞が少ないホルモンでも増殖できるように工夫し始め、薬が効きにくくなることがあります。これを『去勢抵抗性前立腺がん』と呼びます。しかし、現在はその段階でも効果を発揮する新規ホルモン薬や化学療法(抗がん剤)などの選択肢が増えてきており、長くがんと付きあっていくことも可能になる時代になってきています。今後も新規ホルモン薬は開発されていくと思われますので、新規薬も含めた治療薬を選択しベストなタイミングで切り替えることが非常に重要であると私自身も実感しております!

●化学療法(ドセタキセル)

ホルモン療法が効かなくなった、『去勢抵抗性前立腺がん』の患者さまに行われます。
最近では診断時に転移がある場合などは新規ホルモン薬との併用も推奨されておりトリップレット療法という3つの治療(ホルモン注射、化学療法-ドセタキセル、新規ホルモン薬)を組み合わせた治療法も確立されております。

以上が、前立腺がんの簡単な薬物治療の説明になります。

このように、前立腺がんは正しく向き合えば決して怖い病気ではなく治療に関してはさまざまでリスクにもよりますが、患者さま個人の選択が尊重されるような時代になってきております。当院では、まずはじっくりお話を聞かせていただき患者さまご自身のライフスタイルやご希望を踏まえ泌尿器科専門医としてガイドラインに沿った標準的かつ最善な治療をご提案できるように分かりやすくご丁寧に説明できるよう努めてまいりますので、まずはお気軽にご相談ください、よろしくお願いします!

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