- 2026年4月10日
- 2026年4月16日
前立腺肥大症について
最近、トイレが近くなったと感じていませんか?『年齢のせいかな?』と悩んでしまいがちな排尿トラブル、実は50歳以上が男性の多くが直面する『前立腺肥大症』が原因かもしれません!特に、『夜に何度も目が覚める』、『急な尿意を感じ我慢できない』、『尿が出にくい』などいった症状がある方は注意が必要で、特に『夜間2回以上トイレで起きる』、『尿のキレが悪い』という症状は前立腺肥大症のサインかもしれません!
前立腺肥大症とは
前立腺は男性特有の臓器で、膀胱の下にあり尿道を取り囲むように存在しクルミのような形をしています。正常の大きさとしては20㏄程度です。生殖機能(受精や射精)に関わっていますが、年齢とともにその機能は低下していきます。
また、前立腺が肥大すると、尿道を圧迫し排尿障害を生じたり、前立腺がんを合併することもあります。主に加齢や男性ホルモンの変化によって起こりますが、生活習慣も影響しているとも言われています。加齢とともに男性ホルモンの働きが変化し、前立腺内でホルモンが前立腺細胞の増殖を促し、前立腺が徐々に大きくなります。

一方、膀胱は尿を出しにくい分押し出そうとがんばりますので、膀胱を収縮させる筋肉が発達して大きくなり、膀胱の壁が分厚くなっていきます。すると、膀胱が本来もっている伸展力が失われ、膀胱がカチコチに硬くなっていきます。少しの尿がたまっても、膀胱がそれ以上膨らまないので、意図せず尿を押し出そうとします。これが頻尿や尿意切迫を招く原因となります。
症状
症状とてしては3つに分けることができ、①排尿困難を伴う排尿症状(出すときの悩み)②頻尿や尿意切迫を伴う畜尿症状(溜めるときの悩み)③残尿感や排尿後のもれを伴う排尿後症状があげられます。特に、②に関しては男性の過活動膀胱の原因にもなります。
年齢別にあげると50歳代30%、60歳代60%、70歳代80%、80歳代90%といわれており、60歳代から半数以上、80歳代になるとほぼすべての男性に前立腺の肥大が見られますので『誰にでも起こりえる加齢性の変化』であることが分かり、排尿のトラブルが決して恥ずかしくない症状であることがうかがえます!
検査
検査に関しては簡便かつ痛みを伴うような検査はほとんどありません!以下にあげるような検査があります。まずは問診があり、国際前立腺症状スコア(IPSS)やQOLスコアなどの問診票を患者さま自身に記載していただき、満足度や点数評価を行います。腹部超音波検査や直腸診では前立腺のサイズや残尿測定、形状を評価します。尿の勢いが実際にどれくらいあるかの尿流量測定(ウロフロメトリー)でスピードや排尿量を検査させていただきます。血液検査のPSA測定なども施行し前立腺がんが隠れていないかも精査させていただきます。以上の検査は当院ではすべて可能となっておりますので、お気軽にご相談ください!
前立腺肥大症の予防と治療
次に予防と治療について説明させていただきます。まず予防に関してです。前立腺の肥大自体を完全に止めることはできないですが、ガイドラインの推奨としては以下の3つが挙げられております。
- 1.適度な運動
- 2.食生活の改善
- 3.飲水量の調節 などがあります。
まず、1についてですが、ずっと座ったままの生活では前立腺を圧迫し血流を悪化させるため数十分間のウォーキングやストレッチを週に数回取り入れることで前立腺の血流や代謝を改善させることができます。
2については肥満や高血圧、糖尿病などがリスクを高めるためこれら生活習慣病のリスクを下げることが非常に重要です。具体的には、バランスのよい食事を摂ること(脂肪分の多い食事は控えめに野菜や果物・魚・豆類などをバランスよく摂ること)が挙げられます。バランスの良い食生活は、肥満や生活習慣病の予防になり、前立腺への負担も軽減されることもありますが、すべての疾病予防になりえると考えられます。
3に関しては水分の摂り過ぎが頻尿の悪化をもたらし、控えすぎも尿路感染のリスクになりえます。飲水の量については、外来でもよく質問される事項であり、個々の体格によりますが1日の目安として食事以外で体重の2-2.5%(60Kgで1-1.5L)程度を摂取すると、極端に減らしすぎるのを防ぐことができます。そのほか、アルコールやカフェインは利尿作用があるため過度な摂取、特に寝る前などは避けていただくのが非常に重要です。また、便秘は前立腺や膀胱に圧がかかり排尿症状の悪化もたらすことがありますので日々の便通コントロールも意識するように心がけたいところです。
治療に関しては、基本的には
- 1.経過観察
- 2.薬物療法
- 3.手術療法
の3つが挙げられますが、前立腺肥大症の重症度によって治療が変わってきます。サイズが大きくても自覚症状が特に感じない方は1.経過観察で対応できすますが、50歳を超えるとPSA測定だけは定期的に施行していただくことを強くお勧めします!1の方でも時期が経ってくると排尿困難や頻尿、尿意切迫感などの自覚症状により日常生活に支障をきたし内服治療開始する場合や、手術を行う場合があります。
2.薬物療法に関しては、前立腺に作用する3種類の薬と膀胱に作用する2種類の薬があります。前立腺肥大を改善させる薬としては①肥大によって圧迫された尿道を拡げる、②前立腺サイズを縮小させる、③前立腺の血流を改善させる作用があります。上記前立腺に作用する3つの内服で症状の改善が乏しい場合は膀胱に作用し膀胱の筋肉を柔らかくさせるような内服を追加することもよくあります。
2.薬物療法
≪前立腺作用薬≫
・尿道を拡げる(尿道抵抗を改善させる)
α1受容体遮断薬→ハルナール®(タムスロシン)、フリバス®(ナフトピジル)、ユリーフ®(シロドシン)の3種類の薬剤があります。泌尿器科医なら誰でも知っている処方頻度が非常に高いお薬で、根本的な肥大症の治療ではありませんが、排尿の勢いを改善させるお薬です。非常にコントロールしやすい内服薬で、患者さまの自覚症状も改善します。
・前立腺サイズを縮小させる
5α還元酵素阻害薬→アボルブ®(デュタステリド)の1種類だけですが、①のお薬と併用して処方されるケースが多いです。体積を小さくするため本来のPSAも低下しますので、内服開始前はPSA測定が必要です。因みにAGA薬でも同成分の内服薬を処方します。抜け毛予防のザガーロ®がそれにあたります。
・前立腺の血流を改善させる
PDE5阻害薬→ザルティア®(タダラフィル)の1種類だけです。
前立腺・膀胱・尿道の血管拡張作用によって血流を改善させ、尿道を緩め尿を出しやすくさせます。膀胱の血流も改善させるため、過活動膀胱に効きます。因みにED薬でも同成分の内服薬を処方します。シアリス®がそれにあたりますが、容量が違います。また、最近で低用量を毎日服用する『デイリータダラフィル』という内服方法もあります。こちらに関しては血管内皮機能を改善し血管を若返らせるアンチエイジング効果が期待されており血管の血流をスムーズにし、動脈硬化や生活習慣病の予防、抗酸化作用による全身の細胞老化防止への寄与も報告されています。
≪膀胱作用薬≫
上記前立腺作用の3種類で症状の改善が乏しい場合追加するお薬です。
・膀胱を柔らかくする
β3受容体作動薬→ベオーバ®(ビベグロン)、ベタニス®(ミラベグロン)の2種類あります。膀胱の筋肉を柔らかくさせ膀胱を拡げます。このお薬は尿を出させる薬ではなく拡げることによって尿を貯めようとするお薬であるため、頻尿や尿意切迫などの症状が改善します。女性の方の過活動膀胱で初回での処方頻度が非常に高いお薬でもあります。
抗コリン薬→ベシケア®(ソリフェナシン)、トビエース®(フェソテロジン)
膀胱の筋肉が勝手に収縮するのを抑え膀胱を柔らかくさせるお薬で、こちらも尿をためるお薬です。古くから頻尿や尿意切迫感がある過活動膀胱の治療に使用されてきた歴史のある代表的なお薬です。ただし、上記のβ3受容体作動薬より、膀胱収縮の抑制効果が強いので、排尿困難の増悪や尿閉、口の渇き(口渇)、便秘が起こりやすいです。
以上より前立腺肥大症の薬物療法は何種類もありますが、患者さまのどの症状が強いかで組み合わせすることが可能となっております。基本的には前立腺作用薬から開始し、頻尿や尿意切迫感なども強い場合などは膀胱作用薬も追加をします。膀胱作用薬に関しては近年では副作用の観点からもβ3受容体作動薬を処方するケースが多いです!
最後に手術加療について説明します。内服薬では排尿のコントロールがつかない状態、尿閉になり完全におしっこが出ない状態、尿路感染や血尿、膀胱結石を繰り返す状態では手術加療が必要になります。内服下で尿閉になった場合、手術まで一時的に自己導尿や尿道カテーテル留置を行う場合もあります。手術加療についてはおなかを切らない『経尿道的(亀頭部の外尿道口から金属の筒を挿入)な内視鏡手術』を行います。
3.手術療法
大きく分けて3種類あります。
①経尿道的前立腺切除術(TURP)
電気メスで尿道周囲の肥大した組織を切除します。長年の標準治療となっています。
技量にもよりますが、巨大前立腺などの切除は大出血を伴うこともあります。術後の逆行性射精(精液が膀胱に逆流する)も起こることがあります。
②レーザー手術(HoLEP、PVPなど)
●経尿道的ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)
レーザーで肥大した組織を切除しくり抜きます(みかんの皮から実を取り出すイメージです)。巨大前立腺でも対応可能です。
●経尿道的前立腺蒸散術(PVP)
レーザーで肥大した組織を蒸散させます。血液をサラサラにするお薬を飲んでいる患者さまで施行可能で比較的安全に行えます。
③低侵襲治療(MIST)
日帰りで可能な治療で、ご高齢で既往歴や併存疾患がある患者さまで対応可能で近年増加傾向にある治療法です。
●経尿道前立腺吊り上げ術(Urolift)
特殊な小型のインプラントを埋め込め、肥大した前立腺を持ち上げる方法です。糸でおなか側の前立腺を縛り、尿道を拡げるイメージです。インプラントは半永久的に残りますが、特に問題ないです。
●経尿道的水蒸気治療(WAVE)
肥大した組織に数発、9秒間の水蒸気を注入する方法です。水蒸気の熱を利用し肥大組織を壊死させ、徐々に小さくなっていきます。当院でも導入している日帰り治療です!!
MISTの長所としては日帰りで施行することができ、処置時間としては麻酔導入から考慮しても30分程度(手術時間としては10分前後)で終了することができます。性機能を温存しやすいことも利点ですし、出血もほとんどないため、ご高齢の患者さまでも安全に施行できます。
当院でもWAVEは導入しておりますので、少しでもご興味のある方はお気軽にご相談ください!WAVEの詳細に関しては別ブログで紹介させていただきます。
これら排尿のトラブルは決して恥ずかしいことではなく、前立腺肥大症は加齢とともに起こりえる自然な変化です。適切な治療で改善できる症状です。当院では患者さまのプライバシーにご配慮し、リラックスして相談できる環境を整えておりますので、『病院に行くほどではない』と思わずに、どうぞお気軽にご相談ください!