• 2026年4月15日
  • 2026年4月16日

男性更年期障害(LOH症候群)

男性更年期障害とは

今回は男性更年期障害についてお話します。

女性の更年期障害については聞かれると思いますが、男性にも女性と同様に更年期障害があります!『最近、疲れがとれない。やる気が出ない。』、『性欲がおちた。』などの症状がそれにあたります。

男性更年期障害は医学的に「LOH症候群」として定義され、LOH症候群は加齢男性性腺機能低下症候群の略称で、LOHとはlate-onset hypogonadismの略称で、遅れてやってきた性腺機能低下症という意味になります。男性ホルモンは全身の様々な臓器に作用し影響し、いくつかの種類がありますが総称してアンドロゲンと呼ばれています。ステロイドの一種でアンドロゲンの主な構成成分のひとつが睾丸(精巣)で分泌されるテストステロンです。LOH症候群はこのテストステロンと関係しており、中高年を過ぎるとテストステロンが低下するため、それによりさまざまな症状を引き起こすことがあります。

女性の更年期障害は閉経後にホルモンバランスが安定すれば自然軽快することが多いですが、男性の更年期障害は自然に回復することはなく、男性ホルモンを補充するなどの治療が必要になってきます。テストステロンは、骨や筋肉の維持、造血、脂質代謝、そして精神症状として『意欲低下』や『認知機能』などの心身の健康を保つために重要な役割を果たしています。テストステロンの分泌は20歳代がピークで、加齢とともに衰えます。40歳代以降、緩やかに、個人差が大きく現れるのが特徴です。社会生活でストレスや責任を背負う世代であり、また過度なストレスや生活習慣病もホルモン低下を加速させる原因となります。症状としてはホルモンの急激な分泌低下を引き起こす自律神経の失調症状による不定愁訴があります。さまざまな不定愁訴は、国際的に認められた男性更年期質問表(AMSスコア)による問診票があり、症状の程度を評価します。

男性更年期の症状

症状に関しては、テストステロンに全身に多様な作用を発揮しているためLOH症候群では更年期症状以外にさまざまな心身の両面に症状がおこりえます。症状は大まかに3つあり、自律神経失調での身体的症状、精神的症状、性機能的症状があげられます。

●身体的症状
のぼせ、多汗、不眠、寒気、動悸、息苦しさ、疲れやすい、頭痛、肩こり、めまいなど

●精神的症状
イライラする、怒りっぽい、抑うつ気分、集中力の低下、不安感など

●性機能的症状
性欲低下、勃起不全(ED)など

その他の症状としては腰痛や関節痛、嘔気や食欲不振、皮膚の乾燥感やかゆみ、尿が出ににくい、外陰部の不快感など
です。

男性更年期の診断

男性更年期障害の診断は、主に問診と血液検査(テストステロン濃度の測定)で行います。問診に関しては先述させていただいたAMSスコアによる問診票になります。身体、精神、性機能症状が17項目あり、5段階評価のスコアになっています。

≪問診・検査→診断から治療の流れ≫

・男性更年期質問票「AMSスコア」にご記入していただき、重症度を評価します。

・検査は男性ホルモン(遊離テストステロン)の採血、可能であれば、午前中に血液検査をします(テストステロン値は朝が高値となり夜に低値になるため)。総テストステロン→遊離テストステロンを測定します。同時測定は保険審査上、難しいときがあり総テストステロンの結果が正常であれば、後日改めて遊離テストステロンを測定することが推奨されています。ほかのご病気での症状かもしれませんので、甲状腺機能低下症、うつ病、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群などの疾患がないかどうか必要に応じて問診・採血も追加させていただきます。

・男性ホルモン補充療法の適応を判断するために、テストステロン値を評価します。一般的に、『遊離テストステロンが7.5 pg/mL未満、または総テストステロンが250 ng/dL未満』の場合は、LOH症候群の疑いが強いと考えられますが、最新のガイドラインでは『ホルモン値だけでなく、患者さまの症状もあわせて総合的に判断し、治療開始を検討する』ということになりましたので、『テストステロン値が正常範囲内であっても、症状が認められる場合』には、男性ホルモン補充療法の適応となることがあります。

・男性ホルモンを補充すると前立腺がんを悪化させる恐れがありますので、治療開始前には改めて前立腺腫瘍マーカー(PSA)の測定も行い前立腺がんが隠れていないかどうかを慎重に診断させていただきます。

・男性ホルモン補充療法としては主に注射剤があります。注射剤であるエナルモン®(エナント酸テストステロン)125㎎~250㎎を2~4週毎に筋肉注射します。自費診療にもなりますが、男性ホルモンの軟膏もあります。1日1~2回、陰嚢の皮膚に塗るだけで男性ホルモンの補充ができる医薬品で天然型のテストステロンを配合したクリームタイプの塗り薬です。注射と違い、緩やかで適度に血中濃度中の男性ホルモンを補充することができます。特に、LOH症候群の診断基準を満たすほどの著明な低下はないものの、ストレスが多いビジネスパーソンで、年齢の平均値と比べて男性ホルモンがやや低下している方などには、緩やかに補充できる方法としておすすめです。その他、それぞれの症状を改善するための内服薬を追加することもあります。症状に合わせた最適な漢方薬、性機能障害(ED)がある場合はED治療薬を併用することがあります。

・効果判定に関しては、治療効果が現れてきて症状が軽くなった場合には、徐々に注射間隔を伸ばしていきます。個人差もありますが、投与開始から3~4か月後には症状の改善を自覚できる方や最終的に回復される方もいらっしゃいますので、相談しながらですが注射を終了することも可能です。その間に血液検査(テストステロン、PSA、Hb)も行いながら、副作用の出現がないかを判定します。また前立腺肥大が悪化することがあるため、定期的に腹部超音波検査で前立腺の体積を測定することもあります。

・男性ホルモン補充療法の副作用として、テストステロンは造血能を亢進させるため、多血症となりヘモグロビン値が上昇します。そのほか、肝機能障害や腎機能障害、高コレステロール血症、前立腺肥大の増大、前立腺がんの増悪などがあります。

男性更年期の予防

最後に予防について説明します。予防についてはテストステロンの低下を食い止め、心身の健康を維持するためには体重(内臓脂肪をためない)、運動(筋トレとウォーキング)、環境(睡眠とストレスをためない)の3つが特に重要です。

●体重

ガイドラインでは、肥満(特に内臓脂肪)がテストステロンを低下させる大きな要因として指摘されているため食生活の改善が重要です。

●バランスのよい食事とは・・・

タンパク質、脂質、炭水化物をバランスよく摂取することは言うまでもなく、ビタミンEやビタミンCを含む緑黄色野菜の摂取は精巣の機能維持に大切です。また、高血糖の状態もテストステロンの分泌を抑制するため糖質の過剰摂取も控えてください。テストステロン分泌に不可欠な酵素の構成成分として亜鉛(牡蠣、赤身肉、豚レバー、ナッツ類、卵、納豆)の摂取も非常に重要です。

運動

運動はテストステロンを上昇させる最も効果的な生活習慣のひとつです。特に大きな筋肉を使う運動が有効です。

・特に下半身を鍛えるスクワットなどの大きな筋肉を動かす筋力トレーニングは、テストステロンの分泌を直接的に促しますので非常に効果的です。また、腕立て伏せ、ダンベルを使った筋力トレーニングも有効です。『週に2~3回、10回を2、3セット』から始めてみてください。最初は軽い負荷から始めて、慣れてきたら徐々に回数や重さを増やすのがポイントです。

・ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動を組み合わせるのも効果的で『週に75分、1日25分を3日』速いペースでのウォーキングを取り入れると、肥満解消を通じて間接的にホルモンバランスを整えます。息が少しあがり、会話ができる程度のペースがポイントです。

・ストレッチを毎日5-10分、特に朝起きた時や運動後に行うとことも有効です。

*注意点としては、自分がきついと感じるオーバートレーニングは逆にホルモン値を下げる可能性があるため無理をせず継続できるペースで行っていただくことが大事です!

●環境

良質な睡眠とストレスをためない環境づくりが大切です。

・テストステロンは夜間に分泌されるため、睡眠不足や質の悪い眠りはホルモン低下の原因になります。寝る前のアルコールやスマホ、テレビは控えることが推奨されています。
起床・就寝時間を一定に睡眠時間は7時間前後を目指すようにしましょう。

・過度なストレスはストレスホルモン(コルチゾール)を増やし、テストステロンを抑制します。ストレスの原因は知ることは言うまでもありませんが、理想としては仕事と休養のバランスを保つことが重要です。また、趣味と休息の時間も持ちリラックスできる時間を確保すること、仕事や趣味を通じた社会参加などの関わりや適度な競争心を持つことも脳を刺激しテストステロンを維持するのに有用です。

LOH症候群は、加齢という自然な変化とストレスにともなう男性ホルモンの急激な分泌低下が原因と考えられますので、まずは「ストレスの原因を知り発散すること」が基本であると同時に「日常の食生活や運動を見直すことで生活習慣を改善する」ことも非常に重要です。LOH症候群は、適切な治療で改善でき、生活の質(QOL)を大きく向上させることができる疾患です。

『気分が落ち込んで年齢のせいだから』と諦める前に、決してひとりで悩まずにまずは、一度当院までお気軽にご相談ください!

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